トップ - 小説一覧 - 青い鳥はいない08 ←前へ 次へ→
黒岩双葉のことを考えすぎたせいで夢にまで出てきた。しかもひたすら見つめ合うという思い出しただけで全身鳥肌ものの夢だった。これならゴーくんに食べられたほうがましだ。
大運動会は中止して文房具戦争の作戦会議を開いた翌日、私は重苦しい気分で目を覚まし、私の世界が黒岩双葉にどんどん浸食されているという恐ろしい現実に身震いした。
08.オオカミと赤ずきん
今日は黒岩双葉と手を繋がないといけない登下校も昨日みたいな勉強会もない。つまり黒岩双葉から解放される一日。そう考えて無理やり落ち込む気持ちを持ち上げた。
午前中は、少しだけ勉強してその後思う存分昨日の作戦会議の続きをしよう。
きっと楽しい一日になる。
夕方、過熱する作戦会議の途中でおじさんとおばさんからほぼ同時刻に同じような内容のメールが届いた。二人とも帰りが予定よりも遅くなるらしい。それぞれ別のところにいるはずなのに、やっぱり似た者同士だ。
シチューは食べ尽くしてしまったから晩ごはんを買いに行かないといけない。買い物のときは赤ずきんちゃんごっこがお気に入り。
鼻歌を歌いながらドアを勢いよく開けたら何かにぶつかった。
「ってえ……」
うめくような声は空耳じゃないとおかしい。今この場所で黒岩双葉の声が聞こえるわけがないんだから。それでも嫌な予感がして、おそるおそる控えめに開けたドアの隙間から顔を出したら赤ずきんちゃんがいた。本当に、赤ずきんちゃんだったらよかった。
人のうちのドアの前にうずくまっていたのは、白いTシャツにフード付きの赤いベストを着た黒岩双葉だった。
「……何、してるの?」
おでこを押さえた黒岩双葉が涙目で私を見上げて、笑った。
「携帯、買ってもらえた」
黒岩双葉はふらふらしながら立ち上がると、握りしめていたらしい黒い携帯電話をどこかの偉いおじいさんの印籠のように私に見せた。
黒岩双葉の持ち物に黒が多いのは名前に黒がついているからかとかどうでもいいことを現実逃避で思った。
「電話帳に登録する第一号は、絶対薫子にしようと思って」
自ら未来の傷口をぐりぐり広げるようなことをしている黒岩双葉の情報が私の携帯に記録されるのは喜ばしいことではないけど傷口を広げるのに協力するためだ。
私は仕方なく部屋に置きっぱなしにしていた携帯を取りに戻り、玄関先で黒岩双葉とお互いの情報を交換した。
「へへ、俺超幸せ」
「じゃあね、また明日」
バカみたいに喜ぶ黒岩双葉は無視して一方的に別れの挨拶を告げる。さっさと帰れ。
「そういや薫子、どっか行くとこだった?」
「……晩ごはんを買いにコンビニまで」
「あれ、もしかして今日も一人? だったら俺も一緒に食う」
「帰るの遅くなっちゃうよ」
「平気、俺男だもん」
そんな心配をしてるんじゃないのに。
「それに俺も今日は一人で食う予定だったし」
黒岩双葉を追い払ううまい言葉は何も見つからなくて、私はため息をつきそうになるのをこらえながら渋々頷いた。
「じゃあ、お弁当適当に買ってくるからここで待――」
「じゃ、一緒に買いに行こ」
黒岩双葉の左手が、そうするのが当然と言わんばかりに私の右手にからんできて首のあたりがぞわっとなった。
救いなのは、コンビニが歩いて五分のところにあることか。いや、でも店員さんにも常連と認識されているはずのコンビニに、黒岩双葉と手を繋いで行くのは避けたい。今後行きにくくなってしまう。歩く距離は倍以上になってしまうけど、ここは滅多に行かないほうのコンビニしよう。よし。
三十分後、私は精神的にへとへとになりながら見慣れたおんボロマンションを見上げた。
「腹減ったあ」
のん気な黒岩双葉が憎い。
コンビニで私は今日の晩ごはんにするハンバーグ弁当の他にも飲み物やデザート、万が一おなかが空いたときのためにカップラーメンやお菓子も買い込んでいた。昨日浮いたはずのお金は飛んでいった。黒岩双葉はボリューム満点の幕の内弁当とお茶を買っていた。おごる義理もおごられる義理もないから会計はもちろん別だけど、荷物は全部持ってもらった。というか黒岩双葉が勝手に私の手から奪った。こっちは黒岩双葉のせいで疲労困憊だったし黒岩双葉の両手がふさがって手を繋がなくて済むから奪われたままにしておいた。
「ただいまー」
家の奥まで黒岩双葉を入れたくないから今日も私の部屋に通す。後でまた空気を入れ換えないと。
作戦会議のために丸テーブルはまだ出したままになっていた。テーブルの上に広げていた文房具たちをまとめて机の引き出しにつっこんだ。
「薫子」
部屋の入り口で待っているはずの黒岩双葉の声が真後ろで聞こえた。びっくりして振り返ったら黒岩双葉がすぐそこに立っていた。荷物は全部テーブルの上に置かれている。
「な、何」
「ずっと、気になってた」
「え?」
「俺じゃない奴が薫子のほっぺにちゅうしたっていう話」
いきなり何なんだ。
「それが、どうしたの」
「悔しいから俺もする」
「は!?」
見栄なんか張るんじゃなかったと頭の隅で後悔しつつ私は身も心もひきながら真顔モードの黒岩双葉を見つめ返した。
「よ、幼稚園の頃の話だよ」
「いつの話でも一緒だから俺もする」
ものすごく危険な状況だということだけは悟り、私はよろめきそうになって後ろで机に手を突いた。
「なんで今、そんなこと急に」
訊きながら、昨日不自然に私の横に移動してきた黒岩双葉を思い出した。まさかあのときもそれを言おうとしていたのか。
「どっちにされたかわからないから両方な」
私は両手でほっぺを押さえてガードした。
「そうされると口にしちゃうけど」
黒岩双葉的には冗談のつもりなんだろうけど少しも笑えない。
昨日は結局言い出せなかったっぽいのに今日はなんでこんなに強気なんだ。
「私がする気になるまで待つって言ったのに!」
「だからそれは口の話でほっぺは別」
「う、う、うそつき!」
机の上のリスのしまちゃんを手探りでつかむ。しまちゃんには悪いけどいざとなったら黒岩双葉に投げつけてやる。
「そんなに嫌なら、薫子がしてくれたら諦める」
いつの間にか真顔モードからへらへらモードになっていた黒岩双葉。
どうしてするかされるか究極の選択を迫られないといけないのかわからない。
黒岩双葉の突然の奇行に動揺してしまったけど、よく考えなくてもこんな理不尽な状況絶対おかしい。やっと正常に怒りが込み上げてきてしまちゃんをつかんでいる手に力が入ったところで名案を思いついた。
「する」
「え」
予想外の答えだったらしい。
「私がするから目、閉じて」
黒岩双葉はあたふたと目を閉じた。バカめ。
しまちゃん、私の代わりに頑張って。
音を立てないようにしまちゃんを黒岩双葉の顔のところまで持っていき、鼻先を一瞬ほっぺに触れさせてすぐに後ろに隠した。
「これでいいでしょ」
目を開けた黒岩双葉は訝しげな目で私を見た。
「……薫子」
「何?」
「今の、何か――」
そのときぎゅるるると昨日よりも大分大きな音で私のお腹が鳴った。ナイス私の腹の虫。
「お腹空いた」
私の空腹アピールに黒岩双葉もそれ以上追及するのは諦めて昨日と同じように黄色いクッションをお尻に敷いて座った。しまった、クッションを救出するのを忘れていた。
コンビニで温めてもらったお弁当はまだ十分に温かかった。
「いただきます」
まさか二日続けて黒岩双葉と顔を合わせてごはんを食べることになるなんて。
「どんな奴」
ハンバーグを半分食べ終えたところでずっと無言だった黒岩双葉が口を開いた。
「薫子が前につきあってた奴」
幼稚園の頃の話だと言ったのにそれでも気にするのか。今さらつきまとわれていただけだと訂正するのは癪な気がして小さくため息をつくだけにした。
本当に中身は全然さわやかじゃない。見かけのさわやかさに騙されてつきあうことになるであろう未来の彼女に少しだけ同情した。
「坊主頭でガキ大将で自分勝手で乱暴で強引で、どうしようもない奴だった」
「今も連絡とってたり」
「しない。外国に引っ越しちゃってそれきりだから」
「でも、薫子は好きだったんだろ。そいつのこと」
「双葉、だって好きな人くらいいたでしょ」
しんどうくんのことなんて全然好きじゃなかったけどわざとはぐらかした。
「いたけどさ、ほっぺにちゅうなんてしたことねえし」
「私だって、無理やりされたんだもん」
黒岩双葉はまだ納得していないような素振りだったけどその後は食べることに専念した。
「ごちそうさまでした」
声が重なって顔を上げたら黒岩双葉もちょうどお箸を置いたところだった。
デザートにと欲張って二つ買ったプリンを食べるか訊こうとして、そうすると黒岩双葉がここにいる時間が長くなってしまうことに気づいたからやめた。
黒岩双葉はゴミを手早くまとめた。
「ゴミ、後で捨てておくからそのへんに置いといていいよ」
「あ、うん、ありがとう」
黒岩双葉は急に落ち着かないように辺りを見回し出した。
いつ帰るんだろうとじっと見ていたら目が合った。逸らしたら負けな気分になって見つめ続けた。何故か黒岩双葉も逸らさない。まさかあれは正夢だったのか。
「まだ帰らないの?」
勝負に負けたのは私だった。どうせ負けるならさっさと目を逸らせばよかった。無駄に見つめ合ってしまった。
「帰っても大丈夫?」
まるで私が黒岩双葉を引き止めているみたいな言い方をされてむっとした。
「別に、双葉、にいてほしいなんて、一言も言ってないから」
「今すっごいいてほしそうな目で見てた」
「違うから! 目を逸らしたら負けだと思って、だから全然そういうのじゃない!」
「そんな照れられると俺も何か照れる」
黒岩双葉は頭をかいてへらっと笑った。黒岩双葉の特技は自分に都合のいいように物事を解釈することだ。絶対そうだ。
「私、一人でいるのが好きだから。ふ、双葉が帰ったら作戦会議の続きしようとか、色々予定だってあって」
「うん」
笑顔で頷いているから黒岩双葉に私の真意が全く伝わっていないのはわかった。
「そういやさ、携帯ってカメラついてるじゃん」
誤解が解けないまま突然話題が変わる。同時に嫌な予感がして背筋がぞわりとした。
黒岩双葉は携帯を取り出して無駄にキラキラした笑顔を私に向けた。
「つーことで一緒に撮ろ!」
黒岩双葉の動きは素早かった。立ち上がって私の隣に来て腰を下ろすと、左腕を私の肩に回した。その腕に抱き寄せられて頭が軽くぶつかって、黒岩双葉の顔が私の顔のすぐ横にあって、その密着具合に私が真っ白になっている間に大げさなシャッター音が部屋に響きわたった。
「お、うまく撮れてる。保存保存、と」
私の肩から腕を外した黒岩双葉が私の隣でにやにやしながら携帯をいじっている。
私はあまりのことに動けずにいた。多少は耐性がついていたはずなのにこれだと、数日前の私だったら気絶くらいはしていたかもしれない。さすがに今は消毒用アルコールを頭からかぶりたいとかそういうことまでは思わないけど、衝撃が強すぎて現実をなかなか受け入れられない。
「ほら、薫子、見て」
視界に携帯の画面が飛び込んできた。
とびきりさわやかな笑顔の黒岩双葉と、驚いて目を見開いている、つまり無表情に見える私が写っていた。
「うわーうわー何か恋人同士っぽい。いや、ぽいじゃなくて本当にそうなんだよな。うわー俺超幸せ」
絨毯の上をごろごろ転げ回りそうな勢いで黒岩双葉が悶え出した。
やっと我に返った私は黒岩双葉の携帯に手を伸ばした。じたばたしていた黒岩双葉は、私の手が触れる前に携帯を遠ざけた。
「何?」
まだ半笑いなのが本当に腹が立つ。
「私、撮っていいなんて言ってない」
「うん」
「だから消す」
「だめ。どうしてもって言うならほっぺにちゅうしてくれたら消してもいいけど」
黒岩双葉の笑顔がものすごくあくどく見えた。
「それはさっきした」
「あれが本当に薫子の口の感触だったか確かめたいから」
やっぱりばれていたのか。
「でも、それとこれとは話が違う」
さらに手を伸ばそうとすると黒岩双葉は手を遠くにやったままずりずりと逃げようとする。
「ほっぺにちゅうの代わりにこれで我慢するって言ってるんじゃん」
「だからそれとは関係ないでしょ。消してよ」
黒岩双葉に接近するのはできることなら避けたいけど背に腹は代えられない。
あんな恐ろしいものはこの世に存在してはいけないんだ。
「消し、て……!」
「だめだって。と、わっ」
黒岩双葉の肩に手を置いて押さえつけたまま立ち上がろうとしたら、私の体重を支えきれなかったのか黒岩双葉が後ろに倒れ込んだ。幸い頭は敷きっぱなしのマットレスの上に着地したようだった。黒岩双葉に体重をかけていた私もつられて倒れ込みそうになったけど、絨毯に右手をついてどうにかこらえてそのまま携帯に左手を伸ばした。
黒岩双葉は腕を真っ直ぐ頭の上に伸ばして私が取れないようにしてしまう。この体勢ではだめだ。私はすぐに身を起こしてとりあえず黒岩双葉から離れた。
「だから、ほっぺにちゅうしてくれたら消すってば」
勝手に人の写真を撮ったあげく、こんなに消してと頼んでいるのに倒れ込んだ体勢のまま、しつこく理不尽な交換条件をつきつけてくる黒岩双葉に私の中で何かがぶちっと音を立てて切れた。
「そんなにしてほしいなら、する」
「無理しなくていいって」
起き上がろうとして絨毯に肘をついた黒岩双葉の顔を両手で挟んだ。
黒岩双葉に消せない傷を残せるなら私へのダメージなんてもうどうでもいい。
今後黒岩双葉の彼女になる人には悪い気もするけど、そもそも全部黒岩双葉のせいなのだから黒岩双葉を恨んでもらう。
「薫子?」
きょとんと私を見つめる幸せ王子が、いつか幸せだなんて言えなくなるように。
私は吸い込んだ息を止めて、黒岩双葉の口に目標を定める。
「薫――」
目をぎゅっと閉じていたけど、私の唇は狂いなく目標地点に到着した。黒岩双葉の感触を意識して、心臓が爆発するかと思った。嫌悪感は意識する前にどこかに飛んでいった。
息を止めて少ししか経っていないはずなのに酸素不足になって、私はすぐに唇を離した。
「私、ふ、双葉のこと、本当に大嫌いだから」
何の反応もなくかたまってしまった黒岩双葉に届いたかはわからない。とにかく黒岩双葉を傷つけたくて私はもう一度息を止めて唇を合わせた。
この間テレビで見た恋愛映画の恋人同士のキスシーンを思い出したけどそれだけだった。真似なんてできるわけなかった。奥歯を噛みしめたまま唇を押しつけるだけで限界だった。
猛スピードで降りていくエスカレーターに乗っているみたい。体中、頭の中まで浮き上がった感じがした。
「ん……」
黒岩双葉がうめくように声を上げて重力が戻ってきて、今度こそ完全に黒岩双葉を解放した。
黒岩双葉は中途半端な体勢のまま大きな目をさらに大きくしていた。黒岩双葉の薄く開いた唇に目がいく。
キスした。黒岩双葉と。ちゃんと、わかっている。私は黒岩双葉とキスをした。
本当なら鳥肌全開で気持ち悪くてすぐにでも石けんで口を洗いたいくらいで、そうなっていないといけないのに。
顔が熱い。唇に火がついていると言われても驚かない。心臓は全力疾走した後みたいになっていて、体はうまく力が入らなくて自分の体じゃないみたいだった。
初めてキスしたのだからそれくらいの反応は仕方がないと思う。でも、それを不快な感覚とは程遠いと私の頭が認識しているのが絶望的だった。
――インラン女。
おじさんがおばさんに向かって怒鳴っていた言葉を思い出した。おばさんから産まれてしまったわたしも、そうなのかもしれない。だから誰とキスしても、たとえ相手が黒岩双葉でもこんなにふわふわした気持ちになってしまうんだ。
簡単に飛んでいった黒岩双葉に対しての嫌悪感は、何倍にも何十倍にも膨れ上がって私自身に対しての嫌悪感となって戻ってきた。
「写メ、消すから」
かすれた声が遠くでした。
黒岩双葉が立ち上がるのをぼんやりと眺めてから、帰ろうとしているのだと遅れて気づいた。黒岩双葉を見送るため、じゃなくて黒岩双葉が帰った後ドアの鍵をかけるために、震える脚を押さえながら私も立ち上がった。
「それじゃあ」
まるで逃げるように黒岩双葉は帰っていった。あんなにしつこくほっぺにちゅうとか言っていたのにキスのことには何も触れず、いつもの笑顔は消えたまま最後まで一度も私を見ようとしなかった。
きっと、私にキスされたのが想像以上に気持ち悪くてショックだったんだろう。キスしたいって、言ったくせに。そう言ったのは黒岩双葉のほうなのに。
鍵をかけたら急に力が抜けて玄関先で座り込んでしまった。
黒岩双葉がダメージを受けるのは、つきあうのをやめた後だって当たり前のように思っていた。黒岩双葉は少なくとも今は私のことが好きなはずだったから。
偽善者だけど、多少の同情は含まれていたのかもしれないけど、今までの言動がうそじゃないのは私が一番よくわかっている。あれがうそだったら黒岩双葉の存在自体がうそになる。それくらいありえない。
つまり私とのキスは、好きでも耐えられないくらい黒岩双葉にとっては嫌なことだったんだ。生理的に受けつけないとかそういう類の。本当なら私がそうなるはずだったのに。
鼻水が垂れてきて、何故か泣きそうになっている自分に気づいた。
私がショックなのは、黒岩双葉とキスしても嫌だと思わなかったこと。自分に裏切られたみたいで、すごく汚い人間になってしまったみたいで、泣きたくなるのはそのせいだ。
私は黒岩双葉のことが元々嫌いだから、黒岩双葉に嫌がられたって痛くもかゆくもない。むしろ当初の目的通り黒岩双葉にダメージ、それも思っていた以上の深手を予定よりも早く負わせられたことを喜ぶべきだ。不幸のどん底に突き落としてやるために黒岩双葉とつきあっていたのだから。
黒岩双葉は今頃泣いているかもしれないと思ったら少し気持ちが晴れた。
調子にのってファーストキスを奪われて、しかもそれは最悪の記憶として黒岩双葉の中に残る。
決して幸せだなんて言えない記憶として。
ざまあみろ。